本日、多聞館に昼食でお越しのU様はなんと、70年前に当館にお泊りになった!という方でした。
U様の住んでいらっしゃる地方には「十五の神(奥)参り」といって、15歳になった男子は出羽三山を詣でるという風習があるそうです。
当時(昭和18年)は戦争中であったにもかかわらず、15歳を迎えた集落の男子皆が先達に率いられて出羽三山をお参りし、その道中に当館(当時は「多聞亭」)にお泊り頂いたそうです。
先日、ご予約の電話を頂いたときに「お宅は昔、多聞亭といいませんでしたか?」とお尋ねになられたので、当館と古い縁のある方だとは思いましたが、70年も前にお泊まりいただいた方だとは驚きでした。
U様は常々、「十五の神(奥)参り」のことを口にされ、もう一度お参りに行きたいとおっしゃっていたそうです。
当時一緒に詣でた仲間は残念ながら皆さん他界されており、今回は奥様とご一緒にお越しくださいました。
70年前の面影を残す当館を懐かしみながら、地元料理を喜んでくださいました。
85歳とはいえご自分で車を運転されるほどの若さ溢れるU様でした。
今回の出羽三山参拝のご利益にあずかり、ますますお元気で過ごされますように・・・。
昨日の正善院荒澤寺主催の「羽黒派修験道秋の峰」に続き、今日は出羽三山神社主催の「羽黒派古修験道秋の峰」が始まりました。
いずれも7日間の日程で、『十界修行』を通して『擬死再生』を果たし、『即身成仏』の山伏となることをめざす難行です。
今日の峰入りには全国各地より167名の山伏が参加しました。
多聞館からも2名の山伏の方を送り出しました。
集合場所の宿坊を出立した一行は峰薬師神社において「梵天投じ」の行を行い、新たな生命を笈(おい)に宿した後、とうげの町を通り、羽黒山の山中へと入っていきました。
修行者皆様の安全と修行の成就を祈念申し上げております。
8月12日の夜。
ライトアップで照らし出された国宝羽黒山五重塔のもとで、尺八奏者のき乃はちさんによる奉納演奏が行われました。
五重塔に向かい、深々と礼をして始まったき乃はちさんの演奏。
歌舞伎座で9月上演の「陰陽師」のオープニング曲とエンディング曲、「宙へ」、「浪人」のオリジナル4曲が演奏されました。
何本かの尺八を駆使しながらの演奏は、尺八という楽器のイメージをはるかに超えた印象を与えます。
暗闇に照らし出される五重塔とあいまって、まさに幻想的な空気に包まれました。
聴き入った200名ほどのお客様たちは口々に「すごかった!」「すばらしかった!」と話しながら帰っていきました。
たくさんの観客を前にした演奏は、プチライブのようにも見えましたが、「奉納演奏」の姿勢を崩さないのが、き乃はちさんの素晴らしいところ。
演奏を終えお客様の大半が帰ったあとに、スタッフとともに音響設備等の撤収を終えて帰る際、同行していたご家族とそろって五重塔に向かって深々と礼をされていた姿が印象的でした。
今回の奉納演奏をご快諾いただいた出羽三山神社のご担当者からは、来年またぜひ奉納演奏をして頂きたいというお話も聞かれました。
その実現を期待しています!
急な告知で恐縮すが、8月12日午後7時30分頃より、ライトアップ開催中の国宝羽黒山五重塔において、尺八奏者の「き乃はち」さんによる奉納演奏が行われます。
4年ほど前にご縁があって、朝日に輝く五重塔に向かって奉納演奏された様子を拝見しましたが、尺八という楽器の概念がガラッと変わり、今もなお強く印象に残っています。
その後、「宙」、「粋」という彼の2枚のアルバムも入手しましたが、それを聴くたびに、あの朝の演奏を思い出しています。
今回は暗闇に浮かび上がる五重塔に向かっての奉納演奏。
新聞報道によれば、9月に歌舞伎座で染五郎や海老蔵が出演して上演される新作歌舞伎「陰陽師」の主題曲をはじめ、オリジナル曲などを30分間ほど演奏されるそうです。
ご本人曰く、「幻想的な空間になりそう」とのこと。
ぜひ、多くの皆さんに聴いていただきたいです。
なお、鑑賞は無料だそうですが、五重塔ライトアップ期間中の夜間参拝の際には¥300の協力金をお願いしておりますので、よろしくお願いします。
東北管区気象台は3日、北陸から東北にかけての梅雨明けを発表しました。
東北南部では平年よりも9日遅く、統計史上5番目に遅い梅雨明けだということです。
たしかに今年の梅雨は長かったですね。
これからが東北の夏本番。
青森ねぷた、秋田竿灯、山形花笠、仙台七夕と、夏祭りも真っ盛りです。
月山もこれまで以上に賑わうことでしょう。
どうぞ、東北の短い夏を楽しみにお越しください!
アップが遅くなりましたが、先日7月24日に月山に登ってきた際に撮った花の画像を紹介します。
行程は羽黒山口(8合目)から月山山頂の往復です。
八合目駐車場を出発して木道を歩き出すとすぐに目を引くのがキンコウカの群生です。
行きのまだ薄暗いときにはそれほど目立ちませんでしたが、帰りには鮮やかな「金光」色で迎えてくれました。
その先しばらくはニッコウキスゲが見頃です。
ただ、例年に比べるとちょっと少なめだったような感じがしました。
それに比べて群生が目立っていたのがコバイケイソウです。
例年よりもかなり広範囲で独特の匂いを放っていました。
参道のあちらこちらではナンブタカネアザミがギザギザの葉を伸ばし、またウラジロヨウラクは鈴なりの枝を広げていました。
一の岳の雪渓を過ぎ、畳石と呼ばれる風衝地ではチングルマやハクサンイチゲなど、可憐な花がたくましく咲いていました。
九合目の仏生池小屋が近付くと、ハクサンフウロが多くなってきます。
月山の代表的な花です。
小屋の付近ではトウゲブキも盛りで、ピンクと黄色のコントラストを演出していました。
さらに登ると、岩場の影には、ハクサンシャクナゲがひっそりと咲いています。
意識していないと見落としてしまいそうですが、毎年楽しみにしている花です。
風衝地の大峰から木道付近ではさらに花の種類が増え、ミヤマリンドウ、ヒナウスユキソウ、ヨツバシオガマ、ハクサンシャジン、ウサギギクなどが一面に咲いています。
さらに頂上に近付くと、雪の消え際からシダやショウジョウバカマが顔を出していました。
月山は2000メートル弱という標高のわりに、多様な高山の花々が見られることから、「花の山」とも呼ばれています。
今回紹介した花々以外にも、場所や時期を少し変えただけで、また違った花々に出会えます。
どうぞ、これからの登山シーズンに、月山にお越しください。
今日は未明から、出羽三山講中の先達として月山に行ってきました。
「講中」というのは、地域や特定の集団において、出羽三山の参拝を目的として組織された人の集まりです。
出羽三山講中は、東北一円はもとより、北関東、千葉、北陸地方など、東日本の広い地域に古くから広がっています。
その出羽三山講中が出羽三山を訪れた際に、山の案内や祈祷、供養のお世話をするのが「先達」です。
今回、私が案内したのは、宮城県の「仙台市荒井出羽三山講」の皆さんです。
こちらは、多聞館が多聞坊という宿坊であった頃(50年以上前)からお世話させていただいている講中です。
月山登拝に先立ち、昨日は羽黒山でご祈祷と、供養を行いました。
そして今日は、朝4時にバスで出発し、月山八合目へ。
バスを降りると、、月山山頂を目指す方々は、弥陀ヶ原の中の宮での参拝に留める方々と別れて、先達の私を先頭に出発しました。
心配していた天気も良好で、弥陀ヶ原の中の宮での道中安全祈願、一の岳での休息、仏生池(九合目)小屋での朝食、行者返しと呼ばれる難所、頂上付近の大雪渓などを経て、無事、頂上の月山神社に到着しました。
途中には雪渓が2箇所。
一つ目は九合目手前の一の岳。
50メートルほどで、ロープに添って歩けばすぐに渡りきれます。
もうひとつは頂上手前の大雪渓です。
2~300m続きますが、傾斜が少なく、難なく歩けます。
雪上を歩くのが苦手な方は、少し上を歩けば雪渓を完全に避けられます。
月山山頂では、大江禰宜のご奉仕によるご祈祷、塔婆を供えての先祖供養を行い、講員の皆さんは万感を胸に留めながら帰路につきました。
月山神社を出たところでは、昨日多聞館に同宿されていたお客様と出くわし、記念撮影をご一緒しました。こんなところにも強いご縁を感じました。
山を下る途中では、先達に導かれて次々に上ってくる講中や、登山・トレッキングツアーの一行、さらには学校行事で月山登山に来ていた地元の羽黒第一小学校の児童たちとも行き会いました。
天候に恵まれたおかげもあってか、行き会う皆さんは一様に明るい表情で挨拶を交わしてくれました。
終盤、小雨も降りましたが、終始レインウェアーは着ずに済みました。
下で待っていてくれた講員の皆さんに出迎えられて、無事参拝を報告。
道中での四方山話に花を咲かせながら、バスで月山を下りました。
このような講中の多くは、毎年出羽三山参拝に訪れ、決まった宿坊・旅館などに宿をとって出羽三山を参拝されます。
そのため、講員と宿は親戚以上の付き合いだともいわれます。
東日本大震災の影響や講中の高齢化などのために、多くの講中で継続が困難になっているのは否めません。
しかし、「講中的」な人の結びつきや心の拠り所としての山と神仏、そしてその仲立ちを請け負う「宿坊的」な存在は、今の世の中でもなお重要な役割を果たせるのではないだろうか、と日頃から感じています。
今日はそんな思いを新たにした一日でした。
今日の未明から朝にかけ、庄内地方では雷を伴った激しい雨が降り続きました。
各地で浸水や土砂災害があった模様です。
多聞館の脇を流れている堰は、今年の春までに改修工事を行ったおかげで氾濫することはありませんでしたが、一時は上限すれすれまで増水し、ものすごい勢いで流れていました。
例年、梅雨の明ける直前にはこういった豪雨がつきものです。
山形県を含む東北南部の梅雨明けは平年で7月25日頃。
今年は各地で平年より1~2週間も早く梅雨が明けていることからも、この雨が上がる今夜には、山形県も梅雨明けとなるような予感がします。
いよいよ月山夏山のベストシーズン到来です!
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